80億分の1 ゲームで生まれる

エッセイ

80億分の1という確率

このサイトの名前でもある「80億分の1」。言葉としてはよく耳にしますが、その小ささを実感するのは簡単ではありません。宝くじや雷と比べ、国や大陸ごとに生まれる確率を並べながら、私たちの確率の直感がどこでつまずくのかを考えてみます。

「80億」という数の手ざわり

国連は2022年11月15日、世界の人口が80億人に達したと発表しました。ゲームのデータでは、いまの世界人口は8,190,071,468人です。一人を1秒で数えるとしても、休まずに数え続けて約260年かかります。江戸時代の中ごろ、1760年代に数え始めて、ようやくいま数え終わるくらいの長さです。

その中の一人であるということは、確率で言えば8,190,071,468分の1です。ただし、これは「あなたがあなたとして生まれた確率」を厳密に求めたものではありません。両親が出会う確率まで遡れば、数字はもっと途方もなく小さくなります。「80億分の1」は、あくまで今この地球を見渡したときの、一人ぶんの重さを表す数字です。

宝くじや雷と比べてみる

珍しい出来事のたとえとして、よく宝くじと雷が使われます。数字を並べてみましょう。

できごと確率出典
ゲームでインドに生まれる6分の1ゲームのデータ
ゲームで日本に生まれる187分の1ゲームのデータ
アメリカで一生(80年)のうちに雷に打たれる15,300分の1米国立気象局(NWS)
ゲームで最も出にくい国(キュラソー)に生まれる117,824分の1ゲームのデータ
アメリカで1年のうちに雷に打たれる1,222,000分の1米国立気象局(NWS)
年末ジャンボ宝くじで1等が当たる(1枚あたり)20,000,000分の1宝くじ公式サイト(1ユニット2,000万枚に1等1本)
地球上の特定の一人として生まれる8,190,071,468分の1ゲームのデータの総人口
雷の確率は、米国立気象局が2009〜2018年の死傷者数の平均をもとに推計したアメリカの値で、日本の数字ではありません。

年末ジャンボ宝くじの1等は、1ユニット2,000万枚の中に1本だけです。地球上の特定の一人であることは、それよりさらに約410倍も珍しいことになります。

一方で、ゲームで日本に生まれる確率(187分の1)は、雷に打たれる確率よりずっと大きく、宝くじの1等と比べれば当たり前と言っていいほどです。インドに至っては6分の1で、サイコロで特定の目が出るのと同じくらいの確率です。宝くじは買わなければ当たりませんが、誕生のほうは、誰もが必ず一度引いています。そこが、ほかの「珍しい出来事」との決定的な違いです。

国別に見た、生まれる確率の上位20か国

80億分の1では、国の出生数に比例して生まれる場所が決まります。現実の世界で、ある赤ちゃんがどの国で生まれたかを無作為に一人選んで確かめるのと同じ考え方です。

順位国確率割合年間出生数
1インド6人に1人17.52%23,187,405
2中国14人に1人7.21%9,538,761
3ナイジェリア18人に1人5.71%7,560,454
4パキスタン19人に1人5.21%6,887,790
5インドネシア30人に1人3.38%4,468,337
6コンゴ民主共和国30人に1人3.38%4,467,760
7エチオピア32人に1人3.14%4,155,789
8アメリカ37人に1人2.72%3,604,040
9バングラデシュ38人に1人2.62%3,469,165
10ブラジル51人に1人1.94%2,572,179
11エジプト54人に1人1.84%2,437,398
12タンザニア55人に1人1.80%2,385,962
13メキシコ65人に1人1.53%2,023,635
14フィリピン72人に1人1.39%1,841,219
15ウガンダ77人に1人1.30%1,722,320
16スーダン79人に1人1.26%1,664,614
17ケニア87人に1人1.15%1,521,884
18アフガニスタン89人に1人1.13%1,492,961
19アンゴラ94人に1人1.06%1,407,762
20イエメン95人に1人1.05%1,394,397
40日本187人に1人0.53%706,660
ゲームに収録されている186か国の年間出生数(国連 世界人口推計2024年版、世界銀行経由)から計算。

上位4か国だけで、世界の出生の36%を占めています。日本は40位で、表の下に別に加えました。

大陸・地域別の確率

地域生まれる確率出生に占める割合人口に占める割合
アジア2人に1人49.7%58.6%
アフリカ3人に1人35.2%18.9%
中南米14人に1人7.0%8.1%
ヨーロッパ22人に1人4.6%9.1%
北米33人に1人3.0%4.7%
オセアニア198人に1人0.5%0.6%
国連の地域区分に近い分け方です。中東の国々はアジア、メキシコ以南は中南米に含めています。

アフリカは世界の人口の18.9%ですが、生まれる赤ちゃんでは35.2%を占めます。ヨーロッパは逆に、人口の9.1%に対して出生は4.6%です。いま生まれる子どもたちの世界は、いま生きている大人たちの世界とは、すでにかなり違う形をしています。

確率の直感がつまずくところ

1. 人口の多さで考えてしまう

「日本に生まれる確率」と聞くと、多くの人は世界の人口に占める日本の割合(1.5%)を思い浮かべます。けれど、いま生まれる赤ちゃんの中での割合は0.53%です。確率を考えるときは、何を母集団にしているかを確かめることが第一歩です。

2.「いちばんありそう」は「たぶんそうなる」ではない

最も出やすいのはインドですが、それでも確率は18%。裏を返せば、82%の確率でインド以外に生まれます。最有力の候補があっても、それ以外をすべて合わせた可能性のほうがずっと大きい、ということはよくあります。

3. どの国も「珍しい」のに、何かは必ず起こる

世界の出生の1%に満たない国は186か国中165か国あります。一つひとつはまれでも、合わせると赤ちゃんの33%がこうした国で生まれています。「この国に生まれるなんて珍しい」と感じるとき、実は「どこか珍しい国に生まれる」こと自体はまったく珍しくないのです。

4. 前の結果は次に影響しない

三回続けてインドに生まれると、「そろそろ別の国が出るはず」と感じるかもしれません。けれど抽選は毎回独立していて、四回目もインドが出る確率は18%のままです。ちなみに三回続けてインドが出る確率は186人に1人で、日本に生まれる確率(187人に1人)とほとんど同じです。「三連続インド」と「日本」は、同じくらい珍しい出来事なのです。

5. 平均寿命は「多くの人が亡くなる年齢」ではない

子どもの死亡率が最も高いナイジェリアでは、生まれたときの平均寿命は約55歳です。ところが、5歳まで生き延びた子どもに限れば、平均して約62歳まで生きます。幼いうちに亡くなる子どもが多いと、平均寿命は大きく引き下げられるからです。ゲームの「平均寿命」を見て「この国では55歳で死ぬ」と考えるのは早合点です。

確率は、一回では見えない

確率が意味を持つのは、くり返したときです。日本に生まれる確率が187分の1でも、80億分の1を100回遊んだときに少なくとも一度日本に生まれる確率は41%しかありません。一回ごとの人生はいつも「たまたま」の産物で、統計の姿が現れるのは、たくさんの人生を重ねたときだけです。

それでも、一回の人生には一回なりの重みがあります。「80億分の1」は小さな確率であると同時に、どの人生も一つしかないという事実の言いかえでもあります。数字の小ささに驚いたあとは、その一つを最後まで生きてみてください。日本についての数字は「日本に生まれる確率」、刻々と増えていく出生の数は「出生カウンター」で見られます。

出典:国連「World Population Prospects 2024」(ゲームのデータ、世界銀行 世界開発指標経由)/国連「世界人口が80億人に到達」(2022年11月15日)/米国立気象局(NWS)「How Dangerous is Lightning?」/宝くじ公式サイト「年末ジャンボ宝くじ」当せん金・本数。平均寿命の計算はゲームの生命表によります。